伊藤ひであきの地方からの提言


二大政党制は幻でないのか      2003.10.27

●政権の枠組み選択が争点のはずだ

 衆院選の公示が迫っている。マスメディアは、今回の総選挙を自民対民主の「二大政党対決」の構図として描こうとする姿勢が目立ち、二大政党のどちらを選択するかのように取り上げている。

 しかし、自民党にしても民主党にしても、単独で政権を運営していくことはできない。なぜかなら参議院(247議席)において単独で過半数(124議席)を持つ政党がないからだ。自民党は113議席、民主党にいたっては67議席しかなく、過半数には遠く及ばない。
 法律は衆院が過半数で可決しても参院が否決すれば、衆院が3分の2以上の大多数で再可決しなければ成立しないというまぎれもない現実がある。
 すなわち、今回の衆院選はどのような政権の枠組みに日本の政治を託すのか、現在の自公保連立政権を選ぶのか、それとも民主党を中心とする政権を選ぶのか――それが最大の争点であるはずである。
 ところが、新聞やテレビの報道を見ると、政権の枠組みではなく、「小泉自民VS菅民主」などと、もっぱら自民と民主の2党のみに限定し、両党の対決構造を煽り立てるかのような論調が際立っている。でそろった各党のマニフェストでも自民と民主のマニフェスト比較が中心である。いささか違和感を禁じ得ない。
 確かに民主党は、自由党との合併により、衆参204人の国会議員を擁する野党に膨れ上がった。菅直人代表は「次期衆院選に勝利し、自公保政権に代わって政権を担当する」と豪語している。
 もし仮に民主党中心の政権ができるとすれば、社民党、あるいは共産党などとの協力なくしては成り立たない。
 民主党は、政策だけでなく政権の枠組み、政権構想を国民の前に明らかにする必要がある。ところが、民主党は、いまだに政権構想を示そうとしていない。また、そのことを指摘しようとせず、二大政党対決を煽り立てるマスコミの報道姿勢も不可解だ。
 併せて国民の価値観やニーズが多元化・多様化している中で、果たして二大政党制で広範な民意を吸収・集約できるのか。二大政党制への固執は幻想ではないのか。

●小選挙区制は妥当なシステムなのか。

 英米両国の二大政党制を理想視するあまりに「政党政治は二大政党制のもとで最も機能する」との思い込みがマスコミに限らず、わが国社会の中に浸透しているのは事実であろう。
 9年前の新進党結成はその顕著な例である。自民党に対抗できうる政権交代可能な二大政党制が日本でも可能かのように思われた。しかし、それは幻想であったことを歴史は証明している。そして、新進党が解党し、小選挙区比例並立制という選挙制度だけが残ってしまった。

 日本には二大政党制よりも、むしろ多党制のほうがふさわしいのではないのか。米ソの冷戦が終結し、脱イデオロギーの時代の中で、いたずらに対立を煽り立てる対決型政治ではなく、対話と政策論争を通じて国民のコンセンサスを形成していく合意形成型政治こそ、今もとめられているのではないだろうか。

 今世紀最初の衆院選を前に、時代の大きな変化の中で連立の時代の衆院選のあり方は妥当といえるのかどうか冷静に考える必要はないか。


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